四方山噺日常録-Retreat Daily Record-

仕事を離れた人間が気ままに過ごす日常録

時よ、そんなに駆けないで

時が経つのは早い。

19世紀のフランスの哲学者、ポール・ジャネは「年月の長さに対する主観的評価は、年齢に反比例する」という法則を発案した。同じ時間の経過であっても、年少者は長く、年長者は短く感じるという。30代に入ってこの方、この法則についてじわじわと考えさせられるようになってきた。

いつの頃からか、私は「いつでも、いつまでも20歳の心身でいる」ことを人生の目標として掲げ、学生時代の友人が昔、ポロっと発案した「20+10歳」という年齢表記をたちまちに採用した。今の実年齢は「20+10+α歳」、40代に入ったら「20+20+α歳」になる。その際、αがいくつになっているのか、ということはこの年齢表記において些末な問題である。

「根幹は20歳の若さを保ちつつ、経験による深みをプラスの部分で出せる大人になる」という思いを自分なりに込めている。「若さを保つ」も、「深みを出す」も、どちらにせよ努力なしでは出来ない、至難の業だ。

しかし、かと言って「このためだけに努力するんだ!」と力を込めるのも、何となく違う気がしている。自然体の、ありのままでの努力。日々の暮らしを丁寧に送ることが、まずは大切なのではないかと、最近考えている。

前置きが長くなってしまったが、今日も残すところ3時間。もうすぐ、楽しみな金曜夜の映画の時間がやってくる。お風呂に入って、着替えを済ませて、今日のために用意した紙コップと飲み物とちょっとだけジャンクなお菓子を机の上に据えて、万全な状態で迎えるつもりだった。

それなのに、それなのに、だ。うっかり、最近ハマっている英単語と表現の勉強に打ち込んでしまい、ハッと時間が経っていることに気付き、ご飯を作って食べ終えたところで、「良かった、まだ時間がある」と油断。これがいけなかった。寝間着の準備もそこそこに、これまた最近ハマっている分厚い小説の続きを読み進めていたら、気付けば1時間近く経っていた。

映画は映画で集中したいので、映画が始まる前には日々の記録も書きたいし、お風呂にも入りたい。迷った結果、冷蔵庫から冷えた飲み物を取り出しつつ、後者を後回しにした。今夜は「名探偵コナン」が優先だ。お風呂よ、ゴメン、夢中になってた自分よ、ゴメン、と心の中で呟きつつ、どこにも向けられない恨み節を、空気の中に見えないように放つ。

「時よ、そんなに駆けないで」と。